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無銭飲食は続出しないのか!? 次の客の飲食代を好きな形で支払うカルマキッチンを始めた米国人ニップン氏にインタビュー

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「情けは人の為ならず」ということわざ。意味を間違ってとらえていませんか? 本来の意味は「情けは人のためではなく、いずれは巡って自分に返ってくるのであるから、誰にでも優しくしておいた方が良い」ですよ!

でも、本当に巡ってくるものなんだろうか……? そんな疑問に答えてくれる人がいました。「世界を『優しさ』の連鎖でつなげたい」と、アメリカで「Service Space(サービス・スペース)」という団体を作り、活動しているNipun Mehtaさん(以降、ニップンさん)です。

先日来日したニップンさんにお会いして、教えていただいたことを紹介します!

【ギフト経済とは?】

ニップンさんは世界を「優しさ」の連鎖でつなげるために、「ギフト経済」というものを広める活動をしています。ギフト経済とは、対価交換を基本とした今の経済ではなく、自分の持っているものをそれぞれの人が与えあうことを基本とした経済のこと。つまり、「ギフト経済」はギブ&テイクではなく、ギブ&ギブを基本とした経済です。

「そんな経済、ちゃんと回るの?」と思うでしょうか。ニップンさんは、それを確認するために “実験” しているのです。今のところ、その実験はわりとうまくいっている様子。

【カルマキッチンを始めたのがニップンさん】

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以前に「前のお客さんがあなたの飲食代を支払ってくれる!! ペイ・フォワードが実感できる『カルマキッチン』に行ってみた」という記事で紹介したカルマキッチンも、ニップンさんの実験のひとつ。

カルマキッチンは、ボランティア運営の食堂。ボランティアの人々が働いて、やってきた人に食事を提供するのですが、その食事の飲食代はすでに前のお客さんによって清算済み。前のお客さんやスタッフから「優しさ」を受けたお客さんは、次のお客さんの分の支払いすることで「優しさ」を次へ送っても良いし、まったく別の形で「優しさ」を送っても良いというシステムです。

ニップンさんはこのカルマキッチンを2003年に始め、すでに3万6000食もの食事を人々に提供しています。「優しさ」の連鎖が3万6000食分。ギブ&ギブの経済は、うまくいっているように思えませんか?

ニップンさんは、アメリカだけではなくインドなど世界中で、ペイ・フォワードで運営されるリキシャや、カフェのサービスの実験を行なっています。

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【タダ飯でしょ! とコンセプトが伝わらない人も】

ニップンさんのカルマキッチンという試みでは、どんなことがわかったのでしょうか。

カルマキッチンが「すでに自分の分の費用は支払済み。次の人にはどんな形で『優しさ』を送っても良い場所だ」と知ると、気になるのは無銭飲食が続出すること。

実際、ニップンさんのカルマキッチンにも、コンセプトを何度伝えても「うん、わかった。でも、つまりはタダ飯でしょ!」としか伝わらないスポーツマンが来たことがあるそう。しかも、彼は「ここはタダ飯が食べられるいい店だ! 来週は友達を連れてくるよ!」と大喜びで帰っていき、翌週は友達2人を連れてきたのです。もちろん、そんな彼がつれてきた友達もコンセプトが伝わらない人たち。

【無償で与え続けてみると…】

その人たちに対して、ニップンさんたちカルマキッチンのスタッフはどうしたか。とにかく与えて与えて与えまくってみることにしたそうです。すると、何回かカルマキッチンでご飯を食べる(つまり他の人の「優しさ」を無償で受ける)経験をした彼らは、テーブルに貼ってある様々なあったかエピソードを書かれたシートを見て「これは好き」と言い出すなど、変化し始めたそう。

そして数週間の後。ついに彼らは、カルマキッチンのスタッフが全員ボランティアで、リラックスをしていてもいいはずの週末に、何の見返りも期待せずにボランティアでやっていることに気づいたのです。そして、自分も手伝うと言い出したそうです。

ニップンさんは言います。「『優しさ』を受けた人が、ほかの人に『優しさ』を送れるかどうかは、その人が今までどれだけ『優しさ』を受けてきたかによるでしょう。コップの中の水と同じ。コップの縁まで水が入っている状態になれば、1滴入れれば外に1滴流れ出るけれど、コップが満たされていなければ溢れ出ることはないのです。」

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【「与えること」をベースにすると、「うれしい気持ち」は倍増する】

あるときには、カルマキッチンのスタッフのTシャツをほしがるお客さんがいました。Tシャツは非売品。「優しさ」を送る実験中のスタッフは、考えた末に、自分のTシャツを脱いでプレゼントをすることに。お客さんは驚き喜び、50ドルのクーポン券を2枚スタッフに渡しました。

スタッフは温かい気持ちになりながらも、「ここは、カルマキッチンだから」と、もらったクーポン券を「あちらのお客さんがくれたので、どうぞ!」と2組のほかのお客さんにプレゼント。そんなことが起こるとは思わなかったお客さんたちは驚き喜びクーポンをくれた人にお礼を伝え、クーポンを提供した人も想像だにしなかった出来事に、恥ずかしいやらうれしいやら。

100ドルの商品を買って、100ドルを支払った場合の「100ドル分のうれしい気持ち」は買った人と売った人の2人にあるだけ。でも、「優しさ」を送り合うと、うれしい気持ちになる人が格段に多くなると言えそうです。

【結局お金を支払うなら、それは想像上のトリックなのでは?】

こういうことをニップンさんがスタンフォード大学で講演したときに、学生のなかから「カルマキッチンの発想はおもしろい。でも、次の人の分を支払うことになるなら、結局は同じことではないか。想像上のトリックを使っているだけではないか?」という質問があがったそうです。

しかし、ニップンさんは言います。
高速道路の料金所で、2つの列があったとします。ひとつは通常通り料金を支払って通る列。もうひとつは次の人の支払いをする列。その場合、どちらを通りたいですか? どちらが気持ちがいいですか? 後者の方が、温かい輪が生まれるのではないでしょうか。

【日本にもニップンさんに賛同したギフト経済ラボがあるよ!】

ニップンさんの想いに感銘を受けて、日本でも優しさの連鎖をつなげる実験をしている人たちがいます。ギフト経済ラボのメンバーです。このギフト経済ラボのメンバーを中心に、日本でも時々、カルマキッチンをはじめとする「優しさ」の実験が行なわれています。

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ギフト経済ラボの松浦貴昌さんは、
「『優しさを送る』ということは仏教でいう喜捨(功徳を積むため、お坊さんにお金や米をもらってもらうこと)に近いんじゃないかと感じています。もらってもらうことがうれしい。『優しさ』を送ることができる自分でいられることがうれしい。でも顔が見える、相手のわかる人に『優しさ』を送るのだと、リアクションを期待してしまいます。そうではなくて、全く知らない人に『優しさ』を送り、自分も知らない人から『優しさ』を受け取る。その経験をするのが大切なのではないかと思っています。」
と話します。

今度のカルマキッチンは12月14日(土)市ヶ谷にて。「『優しさ』の連鎖で世界を繋ぐってどんなことだろう?」と興味を持った人は、一度出かけてみてはいかがでしょうか? 

取材協力=ギフト経済ラボ
参考:カルマキッチンホームページ, カルマキッチンFacebookページ
12月14日についての詳細:http://karma-kitchen-tokyo07.peatix.com/

(取材・写真・文=FelixSayaka/ 一部画像=youtubeキャプチャ)

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オリジナル記事: 無銭飲食は続出しないのか!? 次の客の飲食代を好きな形で支払うカルマキッチンを始めた米国人ニップン氏にインタビュー
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